ダイナミック・プライシングを極めるべし

【ホテル総支配人のブログ 第39話】

「ダイナミック・プライシングを極めるべし」

我々のホテルでは、繁忙期と閑散期、言い換えれば需要と供給の関係によって宿泊料金を柔軟かつ大幅に変更する「ダイナミック・プライシング」を導入している。この価格戦略は、ホテル業界では一般的なものだと思う。私たちのホテルはスキーリゾートにあるため、当然冬期の宿泊料金は高く、逆に夏期のそれは安い。ざっくり言うと、同じお部屋タイプを販売する場合、冬期の料金は夏期の4-5倍である。販売のための原価は、季節によってそれほど変化する訳ではないので、結果として冬の客室販売からの利益率は80%以上となる。それでも冬のお客様は、当ホテルでのご宿泊に満足されてお帰りになる。「価値のあるものを安く売る」ではなく、「価値のあるものを高く売る」ということが実践しようとしていることが、お分かり頂けることと思う。私はこの価格戦略が、もっと日本全体に浸透して欲しいと思っている。もっと需要と供給の差を狙い、お客様の満足度を失わずに、上澄みを取る価格設定の方法があると心の中で思っている。

自分は外国人と仕事をする中で、価格設定に対する慎重さが薄れたように思う。それは良いことなのか、悪いことなのかは分からない。ただ日本人の場合は、「価格を上げるには理由がいる」と考えることが多いのに対し、外国人のビジネスマンは「まずは価格を上げる」ことを考える方が多い。価格を上げる理由は、最終的にはサービスの充実となるのだが、「まずは価格を上げる」というアクションが先にあっても良いのではないかと考えるきっかけになった。改めて私が皆さんに聞きたいのは、「価格を上げるのに、本当に理由は必要なのか?」ということだ。もちろん、最もらしい理由は必要だが、それらは後付けでも良いと開き直ってみよう。「価格を上げるために、価格を上げる」という根拠のない値上げの発想が、もっと日本人には必要だと私は思っている。