インターンを受け入れ続ける理由

【ホテル総支配人のブログ 第18話】

我々のホテルでは、これまで多くのインターンを受け入れてきた。地元の高校生や短大生、四年制の大学生など、幅広く学生を受け入れて来た実績があり、期間も一週間から最大で三ヶ月程度までと様々である。インターンの受け入れによって、現場の負担が大きくなるのは百も承知である。それでもなぜインターンの受け入れに力を入れてきたのか。そこには、私自身が過去に就職活動で困った経験があったからであり、自分が味わった苦しみを若い学生に味わって欲しくないという思いがあるからである。学生には、実社会に出る前に色々と将来について考えて欲しいし、出来れば自分の望む仕事を見つけて欲しいと願っている。

普通の人であれば、学校を卒業してから仕事を始める。自分も普通の高校を卒業して大学に通っていたが、いざ社会に出るとなると、世の中にはどのような仕事があって、自分はどんな仕事がしたいのかということが全く分からなかった。アルバイトもいくつかしてみたが、それでも将来どのような仕事に就くべきか本当に悩んだ。もしかすると、皆さんも同じように悩んだかもしれない。自分は幸い大学時代に少しだけ留学経験があったので、将来は英語を使った仕事をしたいという思いは何となくあったし、その他にも心理学と統計の勉強をしてきたので、そのような経験が生かせる仕事に就きたいと漠然と考えていた。そう考えてはいたものの、自分は就職氷河期に社会に出なければならなかったので、求人自体も少なく、結局は自分を拾ってくれる会社に就職するしかなかった。そのお陰で、自分は厳しい環境下で社会人生を送り、社会に揉まれて強くなったという側面もあるが、出来ることなら同じ苦しみを若い世代には味わって欲しくないと思う。

それから年を重ね、自分はホテルのGMになった。次は私が学生に手を差し伸べ、学生を導く番だ。これからは、実社会と教育機関を結ぶパイプを、企業側が積極的に作らなければならないと思う。学生が継続的に流入するシステムを構築する必要があるだろう。

私のホテルは小さなホテルであるが、自分たちの出来る範囲内で学生を受け入れてきた。学生たちは、ホテルでインターンをすることにより、「理想と違った」と感じたり、逆に「ホテルの仕事は面白かも」と感じているようである。このように、学生に「何か」を感じてもらえるだけで十分なのだ。全ての学生にホテル業界に就職して欲しいとは全く思っていないし、そのうちの何人かでもホテル業界に魅力を感じてくれれば、それで良いと思っている。若い学生たちと触れ合い、その中で彼らの成長を見られるインターンシップというのは、受け入れる側にとっても学びの多いものである。学生が変わっていく様を間近で見ると、こちらまで嬉しくなる。恐らくこれは、自分にとってのライフワークなのだろう。私は将来どこで働くことになっても、インターンシップの取り組みを続けていきたいと思っている。