ホテルの成長過程と成功について

【ホテル総支配人のブログ 第58話】

「ホテルにとっての成功とは何か?」

本日はこのテーマについて考えてみる。ホテルにとっての成功とは何か。

超短期的に見れば、それはホテルを利用するお客様がサービスに満足してお帰りになることである。お客様はホテルでのご滞在中に何も問題なくお過ごし頂けたか、あるいは何かしらの問題を経験したとしても、ホテル側の働きかけがあったお陰で、問題が解消されて満足をしてお帰りになったか。そして、そのお客様は口コミに好印象なコメントを残したり、知人や友人に自分が泊まったホテルのことを紹介して下さったか。このような質問に対する答えが「Yes」ならば、超短期的な成功は達成したと言える。

次の段階の成功は、リピーターを含む顧客層が厚くなり、その結果としてホテルの経営状況が安定することである。この段階になると、まずスタッフの練度も上がるし、何よりホテルとしてはスタッフを長期的に雇用できるようになる。また、資金的にも余裕が出てくるため、営業やマーケティング活動に使えるお金が確保できるようになる。そうすると、新たな新規顧客を呼び込んだり、より魅力的なサービスを提供するという好循環を生み出せるようになる。これが次の段階の成功である。

そうこうするうちに、ホテルは成熟期に入る。この段階での成功とは、顧客の新規獲得やリピート顧客の獲得などと並行して、ホテルのリノベーションや修繕をしっかりと行えるホテルになることである。さらにこの段階になると、人事面ではスタッフの自然な形での新陳代謝が始まり、無理のない形でスタッフの交代が行われていく。サービスレベルは維持されつつも、スタッフの交代が滞りなく進められていく。ここまでが、成熟期のホテルの成功だと私は考える。

そして最後は、歴史的価値のある建物と、レジェンド級のスタッフが揃う老舗のホテルになる。このようなホテルでは、サービスレベルと建物の歴史や威厳、そしてブランドが一致している状態となる。ここまで行くことが出来れば、ホテルとしては大成功と言えるだろうが、そこまで辿り着けるホテルは稀である。私も経験はそれほど多くはないが、数十年という歴史のあるホテルに入ると、とても厳かな気持ちになることがある。そのようなホテルでは、スタッフの振る舞いはスタイリッシュで、誇り高い感じがする。また、建物自体は古いが、しっかりとメンテナンスが行き届いていて立派な佇まいである。この段階が、ホテルの最終的な成功ステージではないだろうか。

以上のように、ホテルの成功にはいくつかのステージがある。そして、ホテルの責任者は、それぞれのホテルの成長段階を把握した上で、ホテルを成功に導くのが責務であると私は考える。