私の意思決定論

【ホテル総支配人のブログ 第31話】

「世の中にインパクトを与える意思決定とは?」

今回のテーマはこちらである。私たちが現在生きている世の中は、先代たちの意思決定によって生まれたものである。そして、私たち現役世代が下している意思決定により、次の若い世代が生きる世の中が作られる。私も含め、全ての人間の意思決定が、現在、そして将来の世の中を形作っていると思う。

皆さんは、それぞれ日々の生活の中で、さまざまな意思決定をしている。しかし「世の中にインパクトを与える意思決定」について考えた場合、それは現在の世の中で要職を担っている世代、つまり私の考えでは40-60代の意思決定の影響力が大きくなる。一概には言えないが、例えば一般的なサラリーマンであれば、40-60代の人間は会社の要職に就いており、大きな裁量を持って事業やプロジェクトを動かしていることだろう。女性であれば、仕事をしつつも、子育てをして大変な時期である。ちなみに私たち夫婦も40代であり、現在は共働きで子供が二人いるため、毎日仕事と家事・育児で大忙しである。このように、40-60代の人は会社の部下や自分の子供など、「自分以外の人間」に影響を持つ世代であると言える。

次に、意思決定の効果が現れるまでのリードタイムについても考えてみる。これも私の個人的な考えだが、意思決定の効果が現れるのは10-20年後だと思う。私はホテルの総支配人であるため、ホテル事業を念頭において話してみると、総支配人としての日々の一つ一つの意思決定がホテルを動かし、ご宿泊されるお客様から代金を頂き、そしてそれがスタッフの給与になるという循環が繰り返される。お客様は長い年月をかけてリピーターとなり、それによってホテルの収益が徐々に安定して、次の雇用が創出される。ホテル単体で考えてみても、経営が安定するまでには、少なくとも3年程度はかかるし、次世代の育成のことも考えると、やはり最低でも5-10年という年月が必要だ。

このように考えた上で、次は今の世の中に目を向けてみる。今私たちが生きる世の中というのは、10-20年前に40-60代だった人の意思決定によって生み出されたものだと私は考えている。私は現在40代だが、今生きている世の中は、10-20年前に40-60代だった人が行った意思決定によって生まれたものであると認識し、そしてそれを受け入れている。それが良い世の中か、悪い世の中かは分からないが、そうやって全ての人間は事前に用意された世界で生きなければならないのだ。

ここで私の結論として言いたいのは、現在の40-60代の意思決定が、次世代の世の中を形成するという意味において非常に重要であるということだ。繰り返しになるが、その世代の意思決定は他人に大きな影響を与える。そのため、現在その世代にあたる人は、事業運営から子育てに至るまで、自分が重大な意思決定をしているという「自覚」を持ち、そして「人として正しい」判断を日々心がける事が重要だと思う。ただそれは、大それたことではなく、例えば個々人が直面する転職などの意思決定もそうだし、子供との関わり方、従業員との付き合い方など、小さなものまで含まれると思う。そういう意思決定の重みとインパクトを理解し、当事者意識を一人一人が持てば、世の中は自然と正されていくのではないかと考える。