使い勝手の良い人間になり切れなかった自分(失敗その2)

【ホテル総支配人のブログ 第29話】

私の失敗シリーズ、その2。私がホテルの総支配人として失敗したことは、「オーナーや本社にとって、本当に使い勝手の良い人間になり切れなかった」ことだと思う。これは自分の性格上、戦略的に演じることも出来なかったし、本能的にも受け入れることが出来なかった。職業的な従順さというのか、悪く言えば「社畜」や「犬」には完全になり切れなかったのである。やはり本社やオーナーにとって私は、彼らの言うことを聞かない、使いづらくて目障りな人間だったのだろうと思う。これは失敗と呼んで良いのかわからないが、会社の中を泳がなくてはならない社会人としては、おそらく失敗なのだろう。ホテルオーナー自体がホテル業や地域事情を理解している訳ではないので、現実に即さないアクションを打てと本社から言われても、そこには面従腹背の姿勢で対応してきた。社内のリソースが限られているので、無駄なアクションを打っている余裕もなかったし、本当はオーナーの命に背いてでも最終的には彼らを利する「逆命利君」の方法を考えてきた。恐らくそれが失敗だったのだろう。

私のホテルグループの本社は海外にあるので、やはり本社の息のかかった総支配人を送り込みたいという思いがずっとあったのだろう。ところがコロナの影響により、本社としてもそれが叶わなかったので、とりあえず地域のことを理解している総支配人が必要だったところに、たまたま自分がいたというだけのことだ。そのような見方をされるのは、とても嫌で残念なことではあるが、ポジティブに考えると、30代と40代の早い段階でGM業を経験させて貰えたのだから、そこは本当にラッキーだったと思う。大変な仕事ではあるが、「年齢は関係なく、自分でもやれる」という大きな自信へと繋がった。また、どのような組織でもナンバー1とナンバー2の責任は大きく違う。ナンバー1であるGMの責任や役割ついて実際に学ぶことが出来て、本当に良かったと思っている。「若い時の苦労は買ってでもせよ」である。