ホテルの成否を決めるもの

【ホテル総支配人のブログ 第46話】

今回は、数あるホテルの中で、成功するホテルと失敗するホテルを決定する要因は何なのかについて考察してみる。私自身の経験を元に考察してみると、大切な要素の一つ目として、まずはホテルオペレーターのオーナーからの独立性が挙げられる。つまり、ホテルオペレーターが、どの程度オーナーとの距離を保って意思決定が出来るのか、またオーナーからの無駄な干渉がない状態でホテルの運営を出来る体制になっているかどうかが、ホテルを成功させる上で非常に重要となる。この点に関しては、あくまでもオーナーとホテルオペレーターの本部が事前に双方で解決すべき問題であり、現場のトップである総支配人のレベルでは解決することの出来ないことである。しかしこの点は、ホテルの成功を左右するキーファクターであり、この点がクリアになっていないホテルは、いずれ失敗すると私は思う。また、もしこれから総支配人のポジションを検討している方がいらっしゃるのであれば、オファーを受ける前にぜひこの点を確認されることをおすすめする。

私のホテルは、ホテルのオーナーがオペレーション会社を持っており、そのオペレーション会社がホテルを運営している。これは一見、一体感のあるホテルマネジメントが出来る体制になっているように見えるかもしれないが、実際は真逆である。例えば、現場への細かな指示に関しても、オーナーとオペレーション会社の両方から異なる指示が来ることが多々ある。これでは、ホテルオペレーターの独立性が全く保たれず、二つの指示に挟まれる現場スタッフは疲弊してしまう。私もこの指示命令系統には非常に苦労することが多かったし、現場としても進むべき方向を見失ってしまうことが度々あった。

また、ホテルオペレーターの本社から指示を受けてホテルを運営する総支配人が、どの程度の裁量を持ってホテルを運営できるのかも、ホテルを成功させるために重要な要素の一つである。様々なステークホルダーから指示が来た場合、総支配人が総合的に状況を判断してベストな選択肢を取ることが出来る体制になっていなければ、ホテルを運営することは非常に難しい。その他にも、「総支配人は予算案に影響を与えられるか?」「そもそも予算は誰が決めるのか?」「総支配人に人事権はあるのか?」「総支配人は予算を執行する権限があるのか?」など、総支配人の裁量が担保されていなければ、そもそもホテルを成功させることは出来ない。

ホテルオーナーが必ずしもホテルマネジメントのプロではないこともあり、彼らのロジックと意思決定が100%通用する訳ではない。そのため、理想としてはオーナーがROIをチェックすることに留まり、ホテルオペレーターと総支配人は承認された予算の範囲内で自由にホテルを運営できる体制となっていることが、成功への第一のステップだと考えられる。