2025年までのホテルの生存戦略

【ホテル総支配人のブログ 第48話】

コロナが終息しても、ホテルの業績が一気に回復する訳ではない。この数年間で他業種に移ってしまった人材を呼び戻したり、人材を一から教育するのには数年の時間を要する。しかも、この人材不足はホテルだけの問題ではなく、例えば清掃会社や近隣の飲食店など、ホテルを取り巻く業者も同様の問題を抱えている。この状況を好転させるには、やはり長い時間がかかるだろう。

今後の数年間は、ホテルとしては高いパフォーマンスを目指すというよりも、まずはホテル自体の生存が最大の目的となり、そのための生存戦略が必要となる。その中で一番重要になると私が考えているのは、サプライヤーの確保である。これが出来ないホテルは、たとえ現在の売り上げが好調であり、キャッシュフローが潤沢であったとしても、必ず難しい局面を迎えることになる。そのため、清掃業者や仕入業者など、ホテルを運営するために必要不可欠な会社から愛想を尽かされないように、ホテル側が努力して関係を維持することがより一層大事になる。繰り返しになるが、ここで失敗するホテルは、たとえ有名ブランドのホテルであっても、足元を掬われて事業が失敗することになると思う。

あと数年間は、ホテルは何としても生き延びなければならない。とても苦しい時期は続くが、逆に考えるとこれはチャンスの時期でもである。この機会に、安売りマインドと価格競争から抜け出して、「価値あるものを高く売る」ホテルとして脱皮するための絶好の機会であると私は考える。