寄せ集めのチームで勝つ方法

【ホテル総支配人のブログ 第33話】

「寄せ集めのチームで勝つにはどうすれば良いか?」

我々のホテルは、急激に発展している地域にあるため、常に人材不足が続いている。しかもその地域は、東京のような都会ではないので、優秀な人材を集めることが非常に難しい。ホテル経験者もほとんどおらず、いつも素人集団で組織を運営しなければならない。このような状況の中で、自分たちはどうやってチーム作りをしてきたのか。今改めて、自分が辿ってきた道を振り返ってみる。

まず自分が信じていることは、「雇用期間の長さは能力に優る」ということである。優秀な人もいることはいるが、そのような方達はすぐに待遇の良いポジションを見つけて、そちらに飛びついていく。そのような人達を中心に組織を作ることが難しいのであれば、発想を転換し、能力は少し劣っていても長く働いてくれる人間を中心に組織を作っていく。

次に大事なのが、急がずにゆっくりとチームのレベルを上げていくこと。よく組織の中の人間が使う言葉として、「あいつは使えない」「もっと仕事をさせろ」などがある。急いで人材を即戦力にしなければならないことは理解しているが、そんなことを言っても仕方がないと思う。人はそう簡単には変わらないし、あまりにプッシュしすぎると、辞めたり精神的に病んだりする。優秀な人間だけで組織を作るのは絶対に不可能であると認識することが大切だ。

むしろ、そのような使えない人間も存在するのが、自然な組織だと私は考えている。もし使えない人間を切ったとしても、それは新たな使えない人を生み出すことにしかならないのだ。それならば、今いるメンバーを失わずに、そのメンバーを大切にしてホテルを運営する方がよっぽど良い。そのためには、使えない人間にも「期待」をかけて、長い目で見て成長を促すこと。皆さんも自分の子供に接する時のことを考えて欲しい。何か出来ないからといって、自分の子供を「切る」ことはあるだろうか。大人も同じで、大きな期待をかけ、長期的に成長するまで見守るべきだと思う。

しかし、そう綺麗事ばかりも言っていられない。優秀な人間は、常に組織を去っていく。その時に私が考えるのは、「スーパースターが去ると、新たなスーパースターが誕生する」ということだ。チームの中心人物がいなくなると、必ず新たな人間が能力を発揮し始める。そしてそのスターたちが、組織を回し始める。だから心配しなくても良いのだ。そう楽観的に考えながら、私は組織を運営している。