インターン50名を受け入れる

【ホテル総支配人のブログ 第2話】

私の働くホテルでは、都市部にある某私立大学から、毎年インターンを受け入れている。この取り組みは今回が2回目であり、今年は大学一年生を約50名も受け入れた。ちなみにこの大学では、企業でのインターンシップを一年生の必修科目に組み込むというユニークな教育プログラムを組んでおり、私のホテルも何かの縁で昨年よりこの大学とプログラム開発に取り組んでいる。

学生の50名を3グループに分けて受け入れ、それぞれのグループにはホテルに10泊して頂き、滞在期間のうちの約5日間を職業体験にあてるというプログラムだ。学生のモチベーションはといえば、決して高い訳ではないし、全てが優秀な学生な訳でもない。必修科目だから、仕方がなく来ているという学生もいるだろう。ピアスをしている男子学生もいるし、無断欠勤をする女子学生もいる。受け入れ側の私としては、まだ大学一年生なのだから、そのような学生がいても一向に構わない。むしろその方が、若さ溢れる学生らしくて、可愛らしいじゃないか。幸い、私のホテルのお客様は9割以上が外国人なので、少しくらい学生の身だしなみが整っていなくても、気にはしないだろう(と私は思いたい)。

そして実際に学生に接してみると、色々な問題を抱えている方がいることが分かった。例えば、円形脱毛症でウィッグをつけている学生、両手首が腱鞘炎で簡単な作業すらできない学生、音過敏症の学生、精神的に不安定で過呼吸になりやすい学生などなど。学生は年齢的にも不安定な年頃であることは理解できるが、本人たちは本当に苦労して悩んでいることだろうと思うと、こちらまで胸が締め付けられるような気持ちになる。人生は時に不公平で残酷である。でもそれを乗り越えて、立派な人間になることを心から願っている。

このような短い研修期間では、学生を戦力にすることは出来ないので、学生の皆様には大変申し訳ないのだが、ホテルスタッフのお客様への対応や言葉遣い、実際の業務だけを見せるだけの時間が多くなってしまう。

ただその中でも興味深いのは、最初はやる気のなかった学生でも、ホテルスタッフの働き方を見て衝撃を受けるようで、日に日に態度が変わってくる様が見られることである。まずはホテルスタッフの語学力の高さや、お客様に寄り添うサービスの姿勢に驚くそうである。そうすると、学生のマインドも瞬く間に変化する。自分の語学力が足りないことに気付いたり、自分が受け身では仕事が来ないということに気付き始める。そして自らお客様に英語で簡単な挨拶をしてみる人が現れ始める。その積極的な行動が、さらに学生本人の自信を高める結果となる。それだけではなく、学生は大人が敬遠するような肉体労働や雑用にも健気に一生懸命に取り組む。その姿は見ていて清々しいし、学生の素直さにはただただ感動させられる。このような不十分なプログラムしか用意できないホテル側の申し訳なさなど気にもせず、真剣に研修に取り組む学生の姿は実に美しい。せっかく何かの縁で知り合ったのだから、これらの学生には幸福な人生を送って欲しいと、親心のように思う。

今日がその研修の最終日だったので、忘れぬうちにこの鮮やかな自分の記録しておくこととする。今時の学生は、決して捨てたものではないし、今回の研修が今後の人生に少しでも役立つことを切に願う。