ブランドに騙されない賢い消費を

【ホテル総支配人のブログ 第21話】

ブランディングとは何か?」

自社のアイデンティティを消費者に伝え、ブランドに対する信頼や憧れを抱かせるような活動の全般とでもいうのだろうか。ブランドの下で働く従業員にとっては、働く自分の誇りやチームの一体感を醸成するものであるし、スタッフそのものがブランドを体現する存在である。またお客様にとっては、例えばハイブランドであれば、高品質なサービスを約束するものであるし、それを使用することで消費者の優越感や自尊心を高めるものかもしれない。ブランドには、高級なものから、低価格帯で馴染みやすいものまで、さまざまなレベルがある。決してハイブランドだけがブランドではなく、低価格帯でも立派なブランドは存在するのである。

ちなみに我々のホテルは、プレミアムではあるが親しみやすい、「第二の我が家」のような存在を目指している。決してラグジュアリーなホテルではないが、お客様が家族と一緒に寛げる場所というポジショニングだ。

ここまでブランドについて考察してきたが、それと一緒に考えたいのが、ブランドおよびサービスに対する顧客の期待値という視点だ。このバランスが非常に重要だと思う。例えば、ラグジュアリーなホテルというブランディングであるにも関わらず、スタッフ不足やトレーニング不足により、お客様を満足させられなかったとしたら、それらのお客様はどのように感じるであろうか。お客様の期待値が高かった分、酷いサービスを受けたお客様は余計に失望するだろう。逆にホテルにあまり期待をしていなかったのに、実際に宿泊してみたら期待していたよりもサービスが良かった場合はどうであろうか。お客様の期待値が低かった分、少しでもスタッフの対応やサービスが良ければ、お客様の評価は「期待以上」となりやすい。

以前私たちのホテルは、顧客満足度が非常に高いということをご紹介した。そこでは自分の考えを十分に説明が出来なかったが、我々のお客様の満足度が高いのは、我々のサービスが競合と比べて優れているからというよりも、むしろ期待値以上のサービスを安定して提供しているという側面が強いと思う。もちろん、私たちのスタッフの対応が良いということもあるだろう。一人一人のスタッフは、いつも顧客のためを思って行動できる方たちばかりなので、サービス自体が優れているからかもしれないが、それよりもサービスとブランドのバランスが良いからこそ、お客様の満足度が高いのだと思っている。

最後に、ホテルで働く私から皆さまに言いたいのは、決してホテルが作り出すブランドに騙されずに、自分で確かめることで「賢い」消費者になって欲しいということである。ブランドを盲信して消費するのではなく、良いものを見極めて賢く消費する人が増えて欲しいと思う。