基本給以外の手当は本当に必要か?

【ホテル総支配人のブログ 第8話】

今回は基本給以外に支給される諸手当について考えてみます。私の勤務するホテルでは、基本給以外にさまざまな手当が存在しました。例えば、家賃手当、持ち家手当、食事手当など、従業員の生活をサポートする目的で諸手当が支給されてきました。

しかし私は、スタッフに良かれと思って設計・支給されてきた手当が、逆にスタッフの不満の原因にもなっていると常々思っていました。「あの人は家賃手当を〇〇万円も貰っていて不公平ではないか?」といった、手当自体が存在しなければ起こり得ない不満の声を耳にすることが多かったのです。

私はこれらの手当が、過去のGMたちがスタッフの離職を避けるためにその場しのぎで打ってきた対策、スタッフの機嫌を取るために導入してきた「妥協の産物」だと思っていたし、手当があることで給与の全体像が見えにくいのがとても嫌でした。そのため、私がコロナ禍でGMになってからすぐに着手したのが、この諸手当の廃止でした。諸手当を支えられる体力がなくなったから、諸手当を廃止するとスタッフにメッセージを送り続ける。そして給与体系を整備して、人事評価と連動させることで、透明性を高める。手当という形で、企業側から目的別のお金を支給するのを止める。このような考えのもとで、約3年かけてほぼ全ての手当を廃止しました。

それだけだと酷いGMのように聞こえるかもしれませんが、実際にその後には、人事評価によって約7割の従業員の給与を上げました。私の最後の目標であった従業員へのボーナス支給は、私自身の退職により叶わぬ夢となりましたが、それでも約3年でここまで辿り着けたことに満足しています。私のしてきたことはとても地味なことですが、この施策が組織の発展のためにじわじわと効いてくることを願っています。私は死んだ後に評価の高まる画家のように、在職中は評価されないGMのまま現職を去ることになるでしょう。