クレーム対応はスピードが命

【ホテル総支配人のブログ 第24話】

今日はホテルにおけるクレーム対応について考えてみる。ちなみにホテル業界では、お客様からの苦情のことを、クレームではなくコンプレイン(Complaints)、略して「コンプレ」と呼ぶことが多いので、ここでもコンプレと呼ぶことにする。

私は約15年間ホテル業界で働いてきたが、幸いなことに悪質なクレーマーに遭遇したことはほとんどない。そういう意味では、自分は本当にラッキーな方だと思う。大都市のシティホテルなどは、それこそお客様からの苦情だらけで大変だと思うが、私たちのホテルはリゾートホテルであり、お客様もリラックスして滞在しているからか、さほどコンプレは多くはない。ただホテルで働く限り、お客様からのコンプレは避けられないものであり、もしお客様が怒っている場合は即座に対応する必要がある。これは、どれだけ経験を積んでも慣れない仕事であるが、私はコンプレ対応がホテルにとって非常に大事だと思っており、これは逆に「チャンス」だと思って即座に対応しようとしている。

お客様からのコンプレは、ある意味ではホテルに対する「問いかけ」のようなものであり、それには「誠意」と「真心」で対応することが大切だ。その場で問題が解決することが出来ればベストだが、たとえ問題が十分に解決出来なかったとしても、親身になってお客様の問題解決に努めれば、お客様に感謝されることも多い。

多くのお客様は、たとえ滞在に不満があったとしても、それをホテル側に伝えずに滞在を終え、そしてその後は決してホテルに戻ってくることはない。その一方で、苦情を言って下さるお客様は、実はホテルの問題点を提起して下さる方であり、その問題へのホテル側の対応が良ければリピーターになって下さる確率が非常に高い。コンプレを言って下さるお客様は、ホテルのことを真剣に考えて下さる方が多く、その意味では本当は「優しいお客様」なのかもしれない。

お客様からのコンプレという「問いかけ」に対して、いかに素早く、かつ誠実に、真心を持って対応できるかが勝負である。その対応の良し悪しが、ホテルの評価、そして長期的にはビジネスの成否を分けるものだと私は考えている。