ホテルに足りない人材とは?

【ホテル総支配人のブログ 第50話】

「日本のホテル業界には、ビジネス志向の人材が少な過ぎる」

接客やサービスを学びたいという理由で、ホテル業界を志望する方は多い。それはそれで結構なことだが、サービスを追求するだけでは、今のホテル業界では生き残れない。そこから更なる進歩がなければ、ただのスペシャリストのサービス馬鹿が出来上がるだけである。結局どこかのタイミングで、ホテルをビジネスとして捉える視点が必要になる。本来マネジメントとはそういうものだと思うが、そこまでのレベルに達していないマネージャーが多いように思う。ホテルのマネージャーは、各部門(もしくは事業)と人の両方をマネジメントしなければならない立場にあり、そのポジションを担える人材を育てることが、ホテル業界全体としての課題のように思える。事業のマネジメントも人のマネジメントも、決して簡単なものではないし、ポジションが上がっても楽になるものではない。私自身も上手く出来ているとは言えないが、日々学びながらやっている。日本のホテルの現場では、ホテルをビジネスとして捉える人間が圧倒的に少ないので、その点を少しでも解消出来るよう、業界全体として努力しなければならない。

何も難しく考える必要はないし、マネジメントに秘技がある訳でもない。私が一番重要だと思うのは、「売り上げを大きくし、経費を少なくして、利益を多くする」というシンプルな発想だ。このくらい大雑把な考え方で良い。しかもこれは、自分の家計を考えるのと同じ要領である。自分が毎月会社から頂いた給料をやりくりし、出来るだけ賢く生活費を使って、そして余ったお金を貯金に回す。その考え方を仕事に当てはまるだけで十分である。一般的な人は、お給料を急に多くすることは難しいかもしれないが、事業ではそれが可能である。その方程式だけ理解すれば、ホテル事業のマネジメントは難しいものではないし、もっと若いうちから挑戦する人材が増えても良いポジションだと思う。何も支配人というポジションは、経験豊富な人だけがやれるポジションではない。自分も若いうちからやってきたからこそ、自信を持って言える。経験不足の人間であっても、やる気と正しい知識があれば、十分に出来るポジションだということを強調したい。