スタッフの使い捨てを止めろ

【ホテル総支配人のブログ 第51話】

「業界としてもっと人を大切に出来ないものか?」

ホテル業界としてそう考えている訳ではないかもしれないが、結果としてホテル業界は人材を無駄に浪費していると思う。ホテルのスタッフは、看護師などと同様に、時間的に不規則な働き方をしている。しかしその割に給料が安く、さらにサービス業特有の接客のストレスもある。待遇が割に合わないということもあるのだと思うが、スタッフの離職率は高い。私の勤務するホテルでも、平均勤続年数が伸びているとはいえ、一年以上勤務して貰えれば良い方だ。

ちなみに、部署長である支配人以上になると、給料はそれなりに良くなる。これは支配人以上にとっては得かもしれないが、ホテル全体を俯瞰すると、やはり給料の配分はいびつである。ホテルの構造として、各部署長の待遇は良くして厚遇するが、第一線で働くスタッフは安月給でこき使うことを前提に成り立っているようにさえ見える。

スタッフの替えがきく時代ならそれでも良かったのかもしれないが、今はそんなことを言ってられるような余裕のある時代ではない。どこのホテルも慢性的な人手不足で、人材の確保に躍起になっているような状況だ。支配人も必要だが、それよりも必要なのは、現場で汗水流して働くスタッフの方なのではないだろうか。

この状況を改善する方法は二つしかない。一つ目は、少数精鋭部隊で各人の給与を高く設定すること。そして二つ目は、給料は安くて不満かもしれないが、普通の人間が7割くらいの力で働けるような職場環境にし、そしてスタッフを少し余分に雇うこと。前者は、スタッフの負担が大きくなるものの、お給料が高めになる選択肢である。後者は、お給料は安いが、無理なく働ける選択肢である。どちらの選択肢が良いかはホテルの判断によるが、いずれかに振らなければ、今の時代にはスタッフは定着しないだろう。